恵比寿大黒屋日記

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<<   作成日時 : 2010/10/01 01:24   >>

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今日で11年

まずはお知らせから。
来月10/23、24
門司の海峡ドラマシップで催される「海峡演劇祭」に
ヴァイオリンの谷本仰さんとのユニット Tremolo Angelos で
「Dialogues in the Dark」という作品を上演します。
詳細はこちら↓
http://kanmon-mojiko.com/event/detail/2010.html

この作品が生まれたきっかけが
11年前のJOC臨界事故でした。
恥ずかしながら、11年前の事故当時はさほど大きな関心を持っていなかったように思います。
11年前というと持病も悪化して手術した前後でしたし
アルバイト先の飲食店がつぶれたりして経済的にも不安定
借金も抱えていたし
当時作っていた劇団もなんとなく行き詰まっていて
自分の生活と将来の不安で一杯だった時期ではなかったかと思います。

その後、この10年の間に
幸い、経済的にも安定して借金も完済
お芝居の方も、劇団を活動休止して新たな方向性に進み始め
自分なりにいろいろ可能性も広がって充実もしていく中
広島とも近い、祝島の上関原発に対する反対運動に関心を持ち始めました。
30年近くにわたって原発建設を阻止してきた祝島の闘いですが
昨年の秋から建設を強行する動きが強まり危機的な状況を迎えているわけですが
一方で、原発に危機感を持つ人たちの関心、運動も広がりはじめ
広島でも若い人を中心に「NoNukesRelay」というムーヴメントが立ち上がりました。
そのムーヴメントの一環として
広島市立大学の湯浅さんから声をかけられたことに、この作品は始まります。
湯浅さんから言われたのは
JCO臨界事故で亡くなられた大内さんの身体を踊ってもらえないかしら」
というコトバだったように記憶しています。
躊躇しなかったといえば、やっぱりウソになるでしょうね。
大量の放射線を浴びた大内さんの体は
新しい細胞を作り出すことができなくなって
はがれ落ちた皮膚は再生することなく
剥き出しの肉の塊のようになりながら
3ヶ月の壮絶な闘病生活の末に亡くなられたのです。
その「身体」を踊る。
どうやって?
それだけじゃない。
そもそも、「大内さん」とはどういう存在なのか。
危険な原子力開発とずさんなJCOの管理体制の犠牲になった被害者
というだけなのか。

この事故と大内さんの闘病生活をドキュメントした本など読むと
大内さんはどこにでもいる普通の会社員と変わりなく
自分に与えられた仕事を誠実にこなす
家族思いの平凡な男性だ。
しかし、ウラン溶液をバケツで扱うというありえない作業工程を
彼も何の疑問も持たずにこなしていたわけではあるまいし
そういう意味では悪意は無かったにせよ、事故に対する責任は皆無ではない。
この事故で被曝した多くの被害者に対しては消極的ではあれ加害者の立場でもある。
実際、製造グループの副長も現場責任を問われたが
同時に現場に居て被曝し、労災認定されている。
被害者であり同時に加害者でもある大内さんの闘病と死。
最先端医療の粋を尽くした医療スタッフの懸命の治療も
私にはただ美談にして終わりに出来なかった。
つくづくヒネクレ者だと思うが仕方ない。
大内さんは、国家プロジェクトである原子力開発の犠牲者であったからこそ
恐らくあのような手厚い治療を受けることが出来た
(ただし、もし誰にも知られずに隠蔽できたなら、
労災認定さえしてもらえない多くの被曝した原発作業員のように
冷たく見捨てられていたのかもしれない)。
医療スタッフはもちろん、ただ目の前の大内さんの命を救うために尽力したのであろうが
考えようによっては
一方では原子力利用に不可避の、今後も起こりうる放射線被曝被害に対処するための
恰好のモルモットとして貴重な研究材料に供されたとも言えるし
一方では、国やJCOからすれば、大内さんというひとりの人間の命を救うというより
原子力開発の危険性を少しでも小さいものに見せるため
被害(死傷者数)をできるだけ小さくとどめておきたい、という思いで「必死」だったのではないか。
実際、全身の皮膚が剥がれ落ち、寝ているだけで24時間激痛に苛まれるのを
モルヒネで痛み止めしながら、貼っても定着しない人工皮膚を繰り返しはりつけ
大量にしみ出し続ける水分を点滴で補給しながら
どろどろの包帯を取り替え続ける治療の毎日に
「一体こんなことをして何になるのか? 早く楽にしてあげた方が大内さんのためではないのか」
そんな思いが頭をよぎったことを医療スタッフも、告白している。
そして、世の中には、もっと軽度の怪我や病気でも
満足な医療が受けられないために死んでいく人たちが無数にいるのも事実だ。

なにも私は、大内さんの死や、彼に施された医療行為をを無駄なものだという気はもちろん無い。
彼を襲った不幸な事故と、壮絶な闘病生活
医療スタッフの懸命の治療、家族の励ましと哀しみ
それらは「特別な」できごとであり、感動的なドラマである。
同時に、これを断じて美談として神聖化すべきでもないと思う。
彼がどこにでもいる普通の会社員と変わりなかったように
それは世界のどこにでもある懸命の生命の営みのひとつでもある。
だからこそ、私はそのエピソードをもとに
なにがしかの表現ができるとも思ったのだ。
彼の死を「特別な死」として美化したり哀れんだり教訓話にしたてたりすることに
私は何の興味もない。
まして大内さんを「ネタ」に反原発のアピールがしたいわけでもない。
誰にも知られることなくひっそりと失われていくあまたの命
誰に褒められるでもなく、それでも懸命に生きているあまたの命と
同じひとつの命として響き合うものとして私はそれを表現したかった。
彼が被害者でもあり、加害者でもあるように
私自身も、恐らくこの世界に生きる誰もが絶対悪でも絶対善でもありえない。
「電気のある便利な生活」を過剰に追い求める多くの人の欲望が
大内さんを殺したのだとも言える。
生きるということは、どんなにきれいごとをならべようと
他の命を奪っていることにほかならない。
同時に、生きていることの中で
人は人を生かすことも出来る。
光の中に闇が孕まれ、闇の中から光は生まれる。
「NoNukesRelay」という反原発ムーヴメントの一環としてやるということも
私にとっては「原発は悪いものだ」というアピールで終わらせたくなかった。
祝島の運動が私をひきつけるのは
ただ、原発が危険だとか、田ノ浦の自然が希少生物の宝庫だから、というだけではない。
祝島に暮らす人たちの命の営みのあり方に魅力を感じるからだ。

広島の小さなレストラン・バーkobaでの初演。
おおまかな流れだけ打ち合わせての即興パフォーマンス。
踊りながら、数日前に起こったハイチ地震のことが
意図せず頭に思い浮かんだりしていた。
賛美歌、光州事件を題材にした「新しい天使」上演のときに生まれた「もうひとつの地球」
谷本さんの演奏も、同じような思いを響かせ合っているのがはっきりわかった。
「大内さんの身体を踊って」と私に依頼した湯浅さんの描いていたであろうイメージは
恐らく大きく裏切られたに違いなかった。
しかし彼女はまた、自分の呼びかけに対して
自分が思い描いていたものとは違うナニカが生まれたことのとまどいを
「めまい」というコトバで再構築し
このときのパフォーマンスについてとある学会でステキな論文も発表してくださった。
海峡演劇祭では、彼女が展示でコラボレーションしてくださることになっている。
また、「新しい天使」にも参加していた友人の写真家・上杉知弘が映像で参加してくれる。
ほかにも、いろいろな形でのコラボレーションも決まりつつあり
ありがたいことに、制作等で協力してくださる方も名乗りをあげてくださっている。
kobaでの出会いと響き合い=Dialoguesの続きとして
Dialoguesが広がりながら、海峡演劇祭での再演が行われる。
終わらないDialoguesの、その今の姿をごらんいただくことになる。
それは、観客としておいで下さる方々との新たなDialoguesの始まりでもあるだろう。
どうぞ、多くの方にご来場いただけることを願っています。

おや、書いているうちに日付が変わってもう10月。
窓の外では虫の音が。
JCO臨界事故から12年目に入った。
相も変わらず原発は作り続けられ
そして相も変わらずありえないような杜撰な操作ミスや点検ミスにヒヤヒヤさせられ
そのたびに繰り返される「人体への影響はわずか」「原発は安全です」の
何の反省も感じられない対応に怒り、呆れる。
大内さんの亡くなる直前には
普通は体内に入ったウィルスなどを攻撃する免疫細胞=マクロファージが異常をきたし
正常な赤血球や白血球を食い荒らしていたという。
自分を守るはずの免疫細胞が、自分自身を破壊していたのだ。
国を守る「防衛力」として増強した軍隊が
やがて大きくなりすぎてしなくてもいい戦争をおっぱじめ
結果として国を危機に陥れるのにも似ている。
原子力利用の「闇」に目をつぶり、隠蔽し
「光」だけを宣伝し、期待を抱いているうちに
「闇」が、異常をきたしたマクロファージのように「光」を食い荒らし始めるのではないか
いや、すでに食い荒らされているのではないかと
不安でならない。

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