恵比寿大黒屋日記

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<<   作成日時 : 2011/12/14 00:11   >>

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ヒロシマ平和映画祭2011
今年も素晴らしかったです。

怒濤の2週間
仕事や体調の問題で見に行けなかったものもありますが
本当に充実すぎる映画祭でした。
私が見に行けたのは
横シネ先行上映「テザ 慟哭の大地」2008ハイレ・ゲリマ監督(エチオピア)
「イトー・ターリ パフォーマンス ひとつの応答 in 原爆ドーム」2009青原さとし監督
「生きていてよかった」亀井文夫監督
「黒い花」2010バティスト・ベセット監督(フランス)
「原発切抜帖」1982土本典昭監督
「槌音」2011大久保愉伊監督
「NoGaTa(土方)」2005キム・ミレ監督(韓国)
「忘れられた爆弾」2010スチュワート・オヴァーベイ、バド・ライアン共同監督(アメリカ)
「AUGUST」2011東美恵子監督(ドイツ)
「女と孤児と虎」2010ジェーン・ジン・カイスン監督
「レイテ・ドリーム」2010クム・ソニ監督(フィリピン)
「水俣−その30年」1987土本典昭監督
「原発震災ニューズリールNo.10」2011藤本幸久監督
「ギフト」2011奥間勝也監督
「アンティゴネ」1991ダニエル・ユイレ、ジャン=マリー・ストローブ監督(ドイツ/フランス)
「花物語バビロン」1997相澤虎之助監督
「RAP IN TOND〜長い予告編」2011富田克也監督
「サウダーヂ」2011富田克也監督
「どんずまり便器」2010小栗はるひ監督
「さようならUR」2011早川由美子監督
「百合子、ダスヴィダーニャ」浜野佐知監督
おおー! 短い作品もあるけど、22本も見たのか〜。
それでも市大や映像文化ライブラリーでの上映分で観られなかったものが10本以上ある。

「ひとつの応答 in 原爆ドーム」は、実際のパフォーマンスにスタッフで関わっていた。
上映も観るのは3回目だけど、何度見ても素晴らしい。
ターリさんの身体を通じて従軍慰安婦や沖縄の米軍による性暴力被害者の痛みが
生き生きと見るものに突き刺さってくる。

「黒い花」は私がナレーションとパフォーマンスで出演している作品。
最初に映像になったものをDVDでもらって観たときは
もともとどういう作品でどう使われるかはっきり決まっていない中での録音・撮影だったせいもあり
自分のナレーションとパフォーマンスが「もっとこうすれば」と気になってしまい
作品全体を客観的に観ることができなかったが
やっとスクリーンで観ることができて初めて「自分」を突き放して
映像作品として味わうことができたような気がする。
「平和の象徴」イメージで知られる「ヒロシマ」の
現実は、実際はそうでもない部分の側面に焦点を当てているため
フランスの上映では怒り出す観客もいたそうだが
こういう視点は絶対に必要だ。
映像詩としても美しい。
西区民文化センターでの上映の後
急遽、私のパフォーマンスとセットでkobaでも上映。
「黒い花」と同時期に広島でロケしていた「AUGUST」の東監督を交えて
トークの時間が作れたのもよかった。
この日は、映画祭でも「水俣−その30年」の上映があり
私自身も3.11以後を水俣と重ね合わせて考えることが多いので
以前にヲルガン座でやった、シタールのマツザキメグミさんとのユニットで
「苦海浄土」朗読+身体パフォーマンス。
このパフォーマンス自体も、2度目でより深まってきた気がする。

実はこの数日前、知人に招かれ
ある自死された学生さんのためにパフォーマンスをやった。
学生さんが通っていた大学の前で、人気のない夜、関係者数人だけの追悼の集まり。
華道パフォーマーの羽鳥さんと、急遽の即興。
ちょうど1年前に亡くなられたその学生さんと私はまったく面識が無かったのだが
会ったことのない死者と、パフォーマンスを通じて死後に出会い直す、ということもあろうと思い
戸惑いつつも招きに応じた。
東海村JCO事故の被害者大内さんやチェルノブイリの死者を題材にした「ホシハ チカニ オドル」も
私はその死者たちともちろん面識はない。
死者のために踊る、死者のことを踊ることで、二度と生きて会うことの出来ない死者と
出会い直す。
私にとって、踊ったり、お芝居をしたりすることはそういうことなのだと
年を追うごとに強く思う。
今年の映画祭の作品たちとの出会いもまた
そのような死者と出会い直す行為でもあった。

そんな会話を少しだけ交わした「ギフト」の奥間監督。
公園の拡張工事のため住処を追われるホームレスの老人と小学生の少年との不思議な交流を
フィクションともノンフィクションともつかないスタンスで映し取った作品。
タイトルの「ギフト」とは、特別なプレゼントなどではなく
意識しないうちに受け継がれ、気がつくと自分の中に残されていた何か
そういうものをイメージしたという、監督の言葉が印象的だった。
大久保監督の「槌音」は、津波で流された監督の故郷・大槌町の
過去と現在が交錯する。
かつてそこにいた人たちと、その暮らし
それが一瞬にして消え去った後の瓦礫の山。
もともと撮影するつもりも無く、カメラを持たずに帰郷した際に
i-phoneで撮影したという被災地の映像が、却って生々しく
特に性能の良くないi-phoneのマイク
(映像はびっくりするくらいきれいに撮れていて、i-phoneすげー、という感じだった)
が拾う風の音や重機の音が耳に突き刺さってくる。
いずれも若い監督さんの作品だ。

若い監督さんとしては、最終日の小栗監督「どんずまり便器」も強烈だった。
撮影・編集技術的にはまだまだ向上の余地があるにせよ
近親相姦というタブーに近いテーマを
(上映後に浜野監督が小栗監督に「映倫通せるならちゃんと通しておきなよ。
でも映倫は近親相姦ネタはそれだけでアウトだからね〜」とアドバイスしてたっけ)
女性側の視点から執拗に追っかけた作品。
弟への性的偏愛から逃れられないまさに「どんずまり」の悲惨なストーリーの果てに
つい笑ってしまう意外なエンディングが好きだ。

公園の拡張で追い出されるホームレス老人を描いた「ギフト」
震災とその後の復興過程の今が映し出される「槌音」
原爆後の「復興」で忘れ去られた「記憶」を描く「黒い花」「AUGUST」
公団住宅の立ち退き問題に迫る秀逸なドキュメント「さようならUR」
これらは「開発」や「復興」による記憶やコミュニティーの破壊を描いた側面がある
(もちろん、それだけではない複雑で豊かな主題や思いをそれぞれがはらんでいる)が
その究極とも言えるのが「サウダーヂ」だったかも
(ちなみに「サウダーヂ」自体は、正確には本映画祭の上映作品では無いのだけど)。
先日、ナント国際映画祭でグランプリを受賞
インディーズでありながら、今年の邦画ナンバーワンの呼び声も高い作品だ。
開発、郊外化、グローバリズム、不景気の波が襲う地方都市
将来の見えない若者たち、不定期雇用の労働者、外国人労働者たち、いかがわしい詐欺まがいのビジネス。
甲府を舞台に
様々な人びとが交錯しながら決して交わることのない
この現代日本に暮らす人びとの孤独感と閉塞感が観るものを打ちのめす。
現代の日本に決定的に失われたものが「故郷」なのかもしれない。
それはもはやホームレスや被災者だけの問題では無い。
立派な家や仕事や家族があっても、なお多くの人が「心休まるふるさと」を失ってしまったディアスポラなのだ。
「人のつながり」としての「帰る場所」の喪失が、急速にこの国を覆ってしまっていると
個人的にはあらためて痛切に思わざるを得なかった。
そんな中、「今年を表す漢字」が「絆」とは、なんのブラックジョークかと思わざるを得ない。
北九州の奥田牧師たちによる震災避難者支援の「絆プロジェクト」は
精神的なケアまできまこまかく
奥田さんの語る「絆」にも深く心を動かされたものだが、
一方でマスメディアが安易にふりまく「絆」の文字や
「今年を表す漢字」などというわけのわからないイベントが選んだ「絆」という言葉の
嘘くささには背筋が寒くなる思いすらする。
実際には、戦後の経済成長、特にバブル以降急速に
大量消費、経済効率重視、グローバル化云々の有無を言わさぬ荒波が
津波の如くこの国を押し潰し、かつてあったはずの「絆」をすっかり押し流していってしまったのだし
今年の震災と放射能汚染問題は、そのことをのっぴきならない現実としてつきつけている。
経済復興もそれはそれで大事なのだろうが
それ以上に「絆」の復興が必要なのだ。
これには政府の補助金も民営化も何の役にも立たないばかりか弊害しかもたらさない。
この震災を機に、私たちはそのことに気づくことができるのだろうか。
気づくことが出来なければ
このまま私たちは「故郷」を喪失したディアスポラとして孤独を深めながら生き続けることになる。

まだ同性愛に対する社会的な認知など皆無の大正時代
レズビアンであることを公言した翻訳家の湯浅芳子と
のちに芳子を捨て共産党の宮本顕治のもとに走る作家宮本百合子を描いた
映画祭の最終上映作品「百合子、ダスヴィダーニャ」。
偏見の目にさらされながら、同性の愛を貫き通した芳子が死の間際に残した言葉は
「私は孤独だが寂しくはない。同じ魂の人間もいる。」。

核や平和の問題を中心にした作品が多い中
結局最後につきつけられたのは「絆」の問題だったのかもしれないし
実際、上映された作品たちが見据えていたのは制度や科学としての核や平和のことではなく
やはり「人間」そのものであり、死者を含めた人と人とのつながりだったのだと
映画祭を終えて実感する。

毎度ながら、この素晴らしい映画祭を企画・運営する実行委員のみなさん
そして、力強い映像作品を携えて広島においでくださった監督さんたちに
こころから拍手と感謝を。

なお、「サウダーヂ」は25日まで横川シネマで上映していますので
未見の方は絶対に見逃さないように!

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