動機

和歌山カレー事件、明日判決。

この事件においては林被告が犯人であることを裏付ける物証はまったく無い。
このような事件を起こす動機もない。
林被告が一人でカレーの鍋をのぞきこんでいた
(何かを鍋に混入していた、という目撃ではない)という目撃証言と
地元では農薬の材料としてありふれた亜ヒ酸を林被告が入手できた
という状況証拠だけである。

林被告がやったかやってないかなんて私にはわからない。
決定的な証拠が無い以上、真犯人以外誰にもわからない。

殺人を犯した(かもしれない)人間が無罪でシャバに出てくる(かもしれない)ことより
何の確かな証拠もなくても死刑にできる社会に生きている、ということの方が
私は恐ろしい。

検察は、一旦起訴した以上、間違っていましたではメンツが立たない。
じゃあ、他にいるかもしれない真犯人は取り逃がしたということか、という話になる。
林被告には住民を無差別に殺害する動機はまったく無いが
(はっきりした動機の無い殺人というものもありうる可能性はあるけれど)
検察には林被告を死刑にする=殺害する、明らかな動機がある。
被害者遺族のやりきれない気持ちはわかるが
「誰でも良いから死刑になれば報われる」というならあまりに身勝手なエゴと言わざるを得ない。
まして、誰でも良いから死刑になれば
それで何か世の中が浄化されたような
「死刑にしろ」と言っておけばなにか自分が正義をなしているかのような
そんな気分で死刑を主張している人びとも
身勝手なエゴという「動機」を持っている。
犯人であるという確たる証拠もない人間を死刑にすることは
殺人でなくてなんだろうか?
林被告が犯人であるという確たる証拠も持たずに
「死刑にしろ」と言う人びとは
殺人に加担することと同じではないのだろうか?
世論が「死刑だ」といえば死刑になるなら
それは恐ろしい殺人社会ではないのだろうか。

最高裁はどういう判断をするか。
裁判員制度実施を前にして
「推定無罪」の原則をもう一度確認する判決であってほしいと思うし
先日も痴漢冤罪事件の逆転無罪判決があったばかりで
この事件でも逆転無罪判決の可能性も十分あるような気がする。
あるいは自判から逃げて「差し戻し」という可能性は大いにあるように思う。

***

090421追記

最高裁、なんともあっさり死刑判決を確定させてしまいました。
林被告を死刑にしたかったというより
もしかしたら「お上」は
「お上」に逆らい続ける安田弁護士をこてんぱんに負かしたいだけなのかもしれません。
ただそれだけなのかも。
ある種の方々のように、別に安田弁護士を神様のように持ち上げる気はありませんが
もしそんな意図が少しでも働いた判決だったとしたら
なおさら腐れ切った判決だったと言わざるを得ない。
しかし、まあ、こればっかりは、調べようもないので、ただの独り言と言っておく。
明日はたしか、安田弁護士を被告とした強制執行妨害事件の最高裁判決。
二審では無罪だったが、これも事件当時オウムの麻原の弁護人だった安田弁護士への
検察による弁護活動妨害の感が否めない事件だ。
それから、光市母子殺害事件の差し戻し最高裁判決も確かそのすぐ後だったような。
短期間に全部負かして安田弁護士を徹底的に貶めようという意図かと
そんな気がしてきた。
そんなのは妄想だ、という気もするが
国家権力がつまらない嫉妬や怨恨に固執して
重大な舵取りの間違いをしてしまうことってあるもんだと思う。
国を動かしているのは人間だ。
愚かな人間なのだ。
国は人間と同じように、間違いを犯し、罪を犯すものだ。
しかし、それを裁く者がいない。
裁く法律もない。

林被告に関しては
「うちのお母ちゃんは、何の得にもならんことは(金にならんことは)しません」
という娘の証言が、検察の主張よりよっぽど説得力があるんだけど。

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この記事へのコメント

つき
2009年05月01日 16:42
失礼
安田弁護士の判決と光市事件の判決は
まだもう少し先のようです
情報が錯綜していました

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