恵比寿大黒屋日記

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zoom RSS 絶望の話

<<   作成日時 : 2011/12/21 01:04   >>

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希望の話

先日20代の若い友人たちがうちに来て鍋をやったとき
うちの一人と戦争や歴史の話になった。
戦争は、単なる領土問題や宗教・民族対立などによって起きるわけではなく
それらを口実として国家とは別の思惑で利益を追求している
軍事産業や金融資本の思惑が大きく関与しているだろうことを話した。
彼は「戦争は無くすことが出来るだろうか」と聞いて来た。
私は正直に答えた。
「恐らく無くならない。」と。
人間には欲望がある。
もちろん、人間には愛情も平和を求める心もあるが
欲望もまた無くすことは出来ない。
残念ながら、それこそが人間が人間たる根本だ。
欲望があるからこそ、他の生物とはまったく異なる異様な進化をしたのが人間なのだと思う。
欲望がなければ、これほど知能ばかりを肥大させ
人類自身を滅ぼすほどの科学技術を生み出すことはなかったはずだ。
それがなければ、人間も他の生物と変わりなく、自然に任せた暮らしで満足していたに違いない。
私の答えに若い彼は困惑の表情を浮かべていた。
「50年後も平和な世界は実現しないと?」
「多分」
そこで私はこう話した。
科学技術は進歩しても
人間の知性そのものはほとんど何も進歩していない。
人間がいかに生きるべきかという理想は
すでにギリシャの哲学者たちがほとんど考えつくしたことだろう。
それでも延々と人間は欲望を肥大させて戦争や差別や搾取を繰り返してきた。
はっきり言って絶望的だ。
だからと言って「もう終わりだ」と諦めることはない。
本当に底の底まで絶望して初めて本当の希望
99%の絶望の果てに一粒残った希望を見いだすことが出来れば
それが本当の希望なのだろうと思う。
その希望を見いだすために生きることは、価値のあることだと思う。
イエスやブッダは恐らく誰よりも深く深く絶望の底をさまよった人だろう。
あれほど愛を説いたイエスは
磔になるとき、彼の一番そばで教えを聞いていたはずの弟子たちが
みな裏切って逃げるであろうと知っていた。
そして処刑されるとき、「神はおられないのか」と叫んだ。
愛したからと言って愛されるわけでもなく
都合良く自分を救ってくれる神もいない。
誰より深くそれを知り、なおかつ愛や神を信じ語ることができたのは
その深い絶望の底にそれでも消すことの出来ない光を
神の愛というものに見いだしていたからに違いない。
ブッダが出家したのは何故、人間には死や病気や貧困の苦しみがあるのかという疑問だった。
ブッダはその根本に欲望があると考えた。
そして、どうやって欲望から解放されることができるかを考え続けた。
しかしブッダ自身もまた、病気と死を免れることはできなかった。
彼はまったく苦しむことなく死んでいっただろうか。
穏やかに息を引き取ったように描かれるが
喜んで死んでいったとはお経にも書かれていない。
やはり当たり前に痛かっただろうし苦しかったに違いない。
ブッダの死を弟子たちは嘆き悲しんだ。
親しい者の死を嘆き悲しむのもまた、そこに欲望や執着があるゆえであろう。
誰よりも深く絶望の底を思索し続け
その果てに何かしら消すことの出来ない希望の光を見いだし
それを説いたイエスやブッダであっても
恐らくは完全に欲望を捨て去ることなどできなかっただろう。
まして弟子たちには、イエスやブッダの這いずり回った絶望の
何分の一かしかのぞき込むことは出来なかったに違いない。
イエスやブッダの教えがこれほど世界中に広まってもなお
人類は戦争も差別も無くすことが出来ない。
やはりそれは絶望的なことだと言わざるを得ない。
世界中のすべてとは言わないまでも
仮に半分の人がイエスやブッダのように生きることが出来るなら
戦争は無くなるかもしれない。
しかし、残念ながら多くの人間の精神力はそれほど強靱にはできていない。
弱いからこそ、悪いことと分かっていながら自制できず欲望に負け
他人を差別し、弱い者を踏みつけて這い上がり、戦争を引き起こす。
それでもなお、やはり人間は諦めることなく生きる。
このどうしようもない絶望の中を生きる。
つきつめれば、当たり前だが、自分がどう生きて死ぬのか、それだけが問題だ。
戦争を無くしたいといくら思い、行動しても
戦争を起こすヤツは起こすだろう。
ガンジーやキング牧師やマザーテレサは世界中に影響を与えたかもしれないが
世界中の国の「一部の人びと」に影響を与えたにすぎない。
常人にはなしえないような信念を持って生きた彼らであってさえ
世界そのもの、人間そのものを変えることなどできはしなかった。
彼らに遠く及ばない私たちに世界を変える力など無い。
だからこそ、生き方が問われる。
仕方がないと諦めて、欲望に流されて
あるいは強い者や周りの空気に流されて生きるのか
それでもなお、信念を持って生きるのか。
ただ欲望に流されて、あるいは強い者や周囲の空気に流されて生きるということは
目の前にある絶望の淵に目を向けることなく逃げて生きることだろうと思う。
きっとそこには希望はない。
商業的な映画やポップソングや小説、マンガなどに氾濫する「希望」の多くは
実のところ「希望的観測」のようなものでしかない
(数年前「希望は戦争」という本が話題になったことがあって
私は読んでいないのだけれども
もし、今の階層が固定化された社会の中で
弱者が強者を逆転するためには
戦争でも起きてガラガラポンで社会がひっくりかえるしかない
という話なら、それはまさに「希望的観測」を「希望」とはき違えているだけ
のように私には思える)。
本当の希望とは、深く深く絶望したその先にしか見いだすことは出来ないはずだ。
「戦争のない世界は実現しうるだろうか」ということは、結局のところ問題では無い。
意地の悪い言い方をすれば
それは少し卑怯な考え方である。
戦争を無くすことが「可能」ならそのために協力するが
「不可能」ならどうするというのか。
やけくそになって戦争に加担するのか
世をはかなんで自殺するのか。
真剣に考えているようで、実は他人事な思考方法にも見える。
問題は、戦争が無くせようが無くせまいが
自分自身が「戦争は絶対にしたくない、させたくない。」という信念を貫いて生きることが出来るのか
それとも
戦争になってもそれで自分に被害が無ければ関係無い
戦争で自分に得があるならしてもいい
といった生き方をするのか。
大事なのはそこでしかないのではないか。

若い彼に話したのは、まあそのうち一部分で
ここでは彼に話せなかった部分も補って書いたわけだけど
まあ、とりあえずそんな風に私は思っている。
そのように生きることが出来ているかと問われれば
残念ながらそこまで徹底できてなどいない。
歴史に名を残す賢人・偉人たちには遠く及ばない
そこらへんにいくらでもいる凡人のひとりでしかない。
あまり強欲な方ではないとは思っているが、それでも欲望だらけだ。
もし、戦争になって、自分や自分の大切な人に銃口を突きつけられながら
戦争への協力を強要されるようなことがこの先起きたとき
拒否できるだけの強靱な信念を持ち得ているかなどわからない。
あるいはその場は表面上だけでも協力してまずは生き延びること
あるいは自分の大切な人の命を守ることの方が重要なのかもしれないし
まあ、いずれにせよ、そのような場面に遭遇してみなければわからないことだ。
世間から立派な人物と見られていた人がちょっとの脅しであっさり転向してしまったり
まったくの凡人と思われていた人が
追い詰められると信じがたいような勇気を振り絞ることだって珍しくない。
しかし、たとえばそのような場面に遭遇したら自分はどうするかと
真剣に想像してみることもまた絶望の淵をのぞきこむ一つの方法だろう。
そのようなことは誰の身にも実際起こりうることだ。
自分だけはそんなことには巻き込まれない、だから考えない
というのはまさに「希望的観測」であり
目の前にある絶望から目をそらしているにすぎない。
3.11以降、実際に私たちをとりまく世界はどうしようもなく絶望的な方向に向かっている。
だからこそ、本気で絶望と向き合う必要がある。
そこからしか希望は見いだせない。
だが、少なくとも政府や財界、マスメディアなどは
ひたすら絶望から目をそらさせる方向へと国民をいざなっているように見える。
当然だ。
多くの人がこの絶望に向き合えば
その絶望を生み出したものの姿が見えてくる
そしてその絶望を生み出しているものから力を奪い
新しい仕組みを作り出そうとする動きが現実化する
それはまさにリアルな「希望」であろうが
そのような「希望」など見いださず
今の権力者がこの先もずっと甘い汁を吸い続けられるように
「希望」のかわりに「希望的観測」を垂れ流すのだ。
困ったことに、人間は弱く、欲望に流されやすくできているので
この「希望的観測」に根拠も無く安心したりする。
だんだん堂々巡りになってきたけれども
ゆえに恐らく完全に平和な世界が実現する可能性は限り無くゼロに近く
私たちは常に絶望的であり
そのどうしようもない絶望を認めて向き合って
はじめて私たちは本当の「希望」を手にすることができる

だろう
というお話しでした。
そうありたいものだ。

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